「インドの人々は先進国IT産業の中枢を担い、また国内では急激な経済発展を遂げ、勢いは止まるところを知らない。この国力の増大は、あなた方の活動にとって、プラスかマイナスか教えて欲しい」
自国の貧困を自らの力で解決する可能性を聞きたかった。
5月12日、東京駅前に聳え立つ丸ビルで行われた「世界フェアトレード・デー2007」フェアトレード生産者団体として参加したタラ・プロジェクト(インド)理事のカイラシュ・ジョシさんは答えた。
「逆風だろう。世界が注目するほどのインドになったはいいが、経済発展をすればするほど、貧困層は増え、金持ちとの格差は広がる一方。苦しんでいるインド国民はたくさんいる。」
中間層に属するジョシさんは、タラ・プロジェクトの活動で貧困層に手を差し伸べている自負があるからだろう、心なしか声を荒げた。
しかし、政治色の濃い発言を要求することになっては、この会の趣旨に反すると思ったので、ジョシが「これで答えになっているか」と聞かれた時「充分です」と答えた。
タラ・プロジェクトは1970年代、インドの若い活動家や教師らがカースト制度そのものや、そのために起こる貧困など、さまざまな問題を抱えるインド社会を改革しようと集まり、活動を開始したそうだ。今では適正な利潤を労働者に与える生産プロジェクト、児童労働から子供たちを救い出し、学校に通うことを可能にする教育プロジェクトに取り組み、着実に成果を上げている。
巨大多国籍企業にしか恩恵を与えないグローバリゼーションと呼ばれる先進国主体の貿易形態は、貧しい生産国を苦しめる。タラプロジェクトの資金源は自分らの生産品の売り上げだけ。適切な利益をもたらすフェアトレードは彼らに絶対欠かせない。
ジョシは言った。「フェアトレード品の購入を含め、日本人の協力が不可欠です。よろしくお願いします」
タラ・プロジェクト(インド)理事のカイラシュ・ジョシさん
児童労働のスライドを見る参加者
ロビーではフェアトレード商品の販売が行われた。